■ 来歴
 
 北海道に犬が入ってきた経路については次のように考えられてきた。第一はアイヌの人たちが縄文時代に北海道に渡ってきたが、その折り犬も伴われて来た。第二としてはオホーツク文化と称する北方系の外来文化と一緒に入った。第三は縄文、続縄文、擦文時代に東北から入った。などが従来考えられていたのである。


 昭和47年以来日本犬研究グループ(代表:田名部雄一博士・現岐阜大学名誉教授)が従来にないユニークな観点から研究を進められた。遺伝形質の中、人為が及ばない血液中の蛋白質についての遺伝を調べ日本犬の起源や各種間の相互関係について調査された。調査結果によると、日本犬の中でも特に北海道犬と琉球犬が本州系の各犬種とは大きく違っている。即ち北海道犬と琉球犬は、東南アジア系統の犬と遺伝子構造が似ている。そして、他の本州系は朝鮮半島の犬と似ていると発表しておられる。これは弥生時代に朝鮮半島を経て弥生犬がやって来て本州系の犬と交雑した。しかし本州と離れている北海道、琉球はその影響を受けなかったと考えられるのである。


 ■ 特徴
 

 古くからアイヌの人々の狩猟の手助けをしてきた北海道犬は極めて勇敢で猟能の優れた犬である。銃器が入るまで、その猟具は手製の弓と槍であった。猟の対象は日本唯一の猛獣「ヒグマ」であり、また俊足の「エゾシカ」である。従ってこの程度の装備では不完全で危険であった。それだけに猟の手助けである犬に優れた活動が要求されるのである。北海道の険しい山岳地帯での猟に従事してきたためか胸郭の発達した、いわゆる前勝の体躯で筋腱が強靱で敏捷な犬である。また、古くから耳は小さく耳間が広く頭蓋の発達したものを猟能に優れていると大切にして来た。寒冷の地北海道に適応して被毛が優れていることも大きな特徴と言えよう。